慶ちゃんが抱いてくれない!
今日から修学旅行だ。
いつもなら行きの新幹線でいつもなら可愛い寝顔で寝ている真穂が俺にもたれ掛かっているはずだった。
「おい。南條…何で俺の席に座ってる?そこ俺の席なんだけど」
「空いてたから。慶次君はそっち座れば?」
真穂がウトウトしている時にタイミング悪くトイレに行きたくなって戻ってきたら、俺が座っていた席に南條が座っていて……真穂は可愛い寝顔で南條にもたれ掛かって眠っていた。
南條に怒りを覚えながら俺は通路を挟んだ反対側の席に座った。
「……魔女同士で仲良くするつもりないとか言ってなかったか?」
「だって花沢さん、甘え上手で可愛いんだもん!優しくて良い子だし、娘みたーい」
そう言って南條は寝ている真穂の頭をポンポンと撫でた。
「娘?……南條、娘いんの?」
237歳って言ってたか?
魔女としても人生の後半戦に入ってるし娘がいてもおかしくないよな。
「いないわよ!付き合ってもないくせにこれ以上私の花沢さんに手を出したら許さないから」
南條はそう言って俺をキッと睨み付けた。
げ……キスの事知ってんのかよ……。
「く…筒抜け……。わかってる……でも、マジでいい加減な気持ちじゃないから……」
クソ…顔が熱い…。
「顔赤くしちゃって可愛い~」
「うるせぇ」
「いい加減な気持ちじゃないなら早くちゃんと気持ち伝えなさい!」
説教したいのか、からかいたいのか?
本当南條ってよくわかんねぇ…
「花沢さん18歳の誕生日っていつなの?」
「来年の5月……」
「5月かぁ……その頃私みんなの前にはいないと思うから半年以内にきっちり花沢さんの納得いくようにしてあげてよね」
「え?何で……そういえば、南條って1年の時からうちの学校にいたっけ?」
「さぁ?どうでしょう?」
そもそも年齢的に高校生をやる必要ってないのに南條は何で高校生やってんだ?
同じところに長くいないって事なのか?
結局真穂の隣りは譲ってもらえずに、目的地まで着いた。