慶ちゃんが抱いてくれない!
信じられないかもしれないけれど、私は魔女の家系の末裔だ。
今まではそんなに強い魔力はなかったけれど、魔女は男性との愛の営みがないまま…18歳を迎えると、強い魔力を使いこなす事が出来るようになり不老のまま300歳ほど生きると言われている。
そして、18歳までに愛する男性と結ばれると魔力はほとんど失われ、普通の人間と同じ様に歳を取るようになる。
しかし、その魔女の寿命は30歳だ。
つまり18歳になるというのは魔女にとってその後の一生を左右する重大な節目の歳になる。
強力な魔力を持った魔女はどんな男性も魅了する事が出来るのだけど、先程は恐らくそれが暴走してしまったのだと思う。
今は感情で力が暴走してしまう事もあるけれど、処女のまま18歳を迎えた魔女はこの力を完璧に扱う事が出来るようになる。
慶ちゃんは私が魔女だという事は昔から知っている。
そして、私は18歳になる前に大好きな慶ちゃんと結ばれて一緒に歳を取る!と、心に決めていた。
だって300年も生きてしまったら人生の半分以上も大好きな慶ちゃんといられないんだよ?
見た目が変わらないから同じ所長く住めないし、300年生きるというのは…とても長くて孤独だ。
そんなの絶対嫌!
「多分…18歳まであんまり時間なくなっちゃってるからだと思う…なぁ?」
勿論、慶ちゃんはその事も知っているので少し含みを持たせて慶ちゃんにそう言った。
「あぁ。早く誕生日来るといいな?」
「そうじゃなくて!慶ちゃん、抱いて!」
「馬鹿。付き合ってもない奴の事なんか抱かねぇって」
「じゃあ、付き合ってよ!っていうか!何で慶ちゃんにはこの力効かないの!?」
「知るか。っつーか、あんまり感情的になるなよ…魅了の暴走止まらないと教室戻れないだろ」
「もう止まったよ!多分!」
「止まってねぇよ、他の時はわかんないけど…この時は真穂からすごい甘い匂いするからな。今もすごい出てるし」
慶ちゃんは私の手首を掴んで顔に近付けると匂いをクンクンと嗅いだ。
「甘い匂いなんてする?自分じゃ全然わかんないけど…」
「とりあえず…今回の暴走の原因は?なんか感情の変化あったんだろ?」
「…知らなーい。慶ちゃんに振られたからじゃない?」
「それは今更ないだろ。原因わからねぇと止められないからちゃんと言えって」
「………慶ちゃん、南條さんとベタベタしてるんだもん」
目線を逸らしながら言うと、慶ちゃんは溜め息をついた。
付き合ってるわけじゃないのに、こんなヤキモチを妬くなんて面倒臭いのはわかってる。