慶ちゃんが抱いてくれない!



真穂はこっちを見た。



「け、慶ちゃん…どうしよ……今までみんなやってるのに……」

「ほら、早く俺のと交換しろよ…今なら」



真穂のトランプと入れ替えようとすると、隣りに座っていた奴が俺のトランプを覗き込んで来た。



「ちょっと誰ー?みんなトランプ出して!」

「なーんだ!慶次のじゃないのか!」



覗き込んで来た奴はそう言って俺のトランプを取って前に出してしまった。

そのまま、そいつは真穂のトランプも取ってしまった。



「あ!1番花沢さんじゃん!」

「うあ…」

「Aは1だよ!ほら、ほら!」



真穂は王様になった奴に腕を引っ張られて、立たせられる。



「小山ラッキーじゃん!花沢さんの事気になってたもんなぁ!」

「バカ!言うなって!」

「えー!?そうなの!?二人、並ぶと結構お似合いじゃない!?」

「あの……えっと…」


真穂は不安そうな顔をしている。



これ……確証はないけど、小山と王様の奴組んでたな……




「真穂ちゃん、優しくしてあげるから安心しなよ」

「うぇーい!いいねー!ほら!ラップ!ラップ!」

「あのさっ!今回のお題は流石にやり過ぎだろ」



下手に場の空気を壊したらまた中学の時みたいな事になりかねないが、どうにかして止めたい。



「慶次ノリ悪いなぁ!ラップ越しだよ!?直接じゃないし!」

「そうだよ、キスくらいでそんな騒ぐなって」




キスくらいって……キスのハードルってそんなに低いのか?
普通そんなもんなのか?





俺は真穂のあの柔らかくてぷるぷるの唇に直接キスをした事があるわけだけど、小山は…ラップ越しだし……?




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