慶ちゃんが抱いてくれない!
声を変える薬
慶ちゃんには一学年上に武蔵(ムサシ)君というお兄ちゃんがいる。
放課後。
私は武蔵君に頼まれて入った化学部の部活動で週3回理科実験室へと出向いていた。
化学部の部員が実験をしている中。奥の一角で慶ちゃんのお兄ちゃんの武蔵君が一人で色々材料を用意して待っていた。
現実的な他の部員と違っておとぎ話に出てくる様な魔法薬の事ばかりに夢中の武蔵君は部員の中で孤立しているけど、全く気にしていないようである。
私は部員達に挨拶をしながら武蔵君のところへ行く。
「ホームルーム長引いて遅くなっちゃった!ごめんね!」
「気にしなくていいよ、それより今日はこの飲むと混ぜた髪の毛の持ち主の声を真似出来る魔法薬を作ろう!」
武蔵君は昔私のおばあちゃんに貰った魔法薬学の本を開いて私に見せた。
慶ちゃん同様に武蔵君も昔から私が魔女だと言うことを知っている。
武蔵君はかなり頭の良い理系男子で慶ちゃんとはあまり似ていないけど、背も高くて顔もなかなか格好良い方なのに少し変わり者でよく一人で数式と睨み合っている。
武蔵君は昔から魔法薬にすごく興味を持っていて、化学部なのに魔法薬の製薬ばかりやっていた。
魔法薬を作るのに使う材料が奇抜な物ばかりなので近付いてくる生徒はいない。
ただ私が作れるのは市販のサプリメント程度の効果のものばかりで本や映画であるような普通の人間では作れないような効果のある物は作れない。
強い魔力を持つようになれば代償を伴う本や漫画で出てくるような人の心を動かせる魔法薬だって作る事が出来る。