慶ちゃんが抱いてくれない!



武蔵君は私に好意を向けてくれてるけど……





高校生の時から付き合い始めて将来結婚するカップルの割合は統計的に見てもかなり低い。





仮に今付き合ったとしても今後別れる可能性も高く、別れて武蔵君が他の人と付き合ったり結婚しても私はずっと武蔵君の事を好きでいないといけない。





振られた後も武蔵君に付きまとってしまうそうで、武蔵君が良い人だからこそ迷惑をかけたくない気持ちもあるし巻き込みたくない。





デートに誘われたのは嬉しかったから来たけど……。





私のリクエストで駅前のたこ焼き屋の前でメニューを見ていると、たこ焼き以外にもたい焼きもあって目移りしてしまう。




「武蔵君……たい焼きも買って良い?」

「うん、食べたいやつどれでも買いな」




そして念願のたこ焼きを食べる事が出来る。




たこ焼きは15年くらい前に仕事をしていた時に仕事先の人が差し入れで買ってきてくれたのを食べて以来だ。




公園のテーブルの付いたベンチでたこ焼きを頬張った。



「久しぶりに食べた~!美味しいっ」

「ふっ!たこ焼きは何年ぶりくらいなの?」

「15年ぶりくらいかな?」

「そうなんだ、そんなに食べる機会なかった?」

「たこ焼きって人と食べる事が多いでしょ?99年間仕事以外で人と関わって来なかったから……学校に通ってた事もあるけど、人とは関わらなかったんだよね。こういうの一人で買って食べるの寂しい気持ちになるから買った事なかったの」

「え!?じゃあ……こうやって出掛けたり、学校で部活に入ったりするのも99年ぶりだったの?」

「うん、ツラい別れとかなくてこの99年は案外あっという間だったなぁ」

「前回映画に行ったっていうのも一人だったの?」

「そうよ、会社でチケットもらったから行ってみたの」

「そうだったんだ……男と行ったのかと思ってちょっと嫉妬してた」


武蔵君は恥ずかしそうに俯いながらそう言った。


「ふふっ!そんな昔の事で嫉妬しないでよ」



どうしよう……武蔵君とのデート楽しい。


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