慶ちゃんが抱いてくれない!
「さてと…19時の映画までかなり時間あるわね」
時計を見ると13時。
こういう時カップル達はどうするんだろう?
恋愛の知識がマンガとかドラマしかないからわからないわ。
フィクションの世界じゃ暇な時間の事なんて全部カットされてるし。
1回家に帰って出直すのかな?
「一旦解散して18時頃に再集合する?」
「一旦解散しないよ、楓ちゃん歌とか好き?カラオケとかボーリングとか興味ないかな?」
「カラオケって!合コンで悪い男に襲われる定番の場所じゃない!」
「何かすごいイメージ持ってるね……楓ちゃん魔法薬作る時鼻歌歌ってる事あるから歌好きかなって思ったんだけど」
「歌ってないわよ!……歌は好きだけど、カラオケなんて行ったことないし」
「じゃあ、行ってみよう?」
武蔵君に連れられて初めてカラオケに行く事になった。
受付を済まして案内された部屋に向かう途中、マンガで見たのと同じ様に部屋が沢山並んでいた。
へぇ……本当にこんな感じなんだ。
確かに薄暗いけど、一つ一つの部屋は中は結構見えるのね。
すると、部屋の中で物凄く濃厚なキスをしてるカップルがいる…え?すご…こんな事……
2人の空間だから盛り上がるのかな?
カップルは2人になるとすぐキスするんだから。全く。
慶次君だってそうだったし。
「…楓ちゃん、あんまり見ないの」
「今日はデートだけど私達はしないから!」
「分かってるよ…俺はそういうのはちゃんと段階踏みたいからまだしないよ」
「まだって!?」
「ほら、部屋着いたよ」
武蔵君は部屋のドアを開けると私の背中に手を添えて中へと誘導してくれた。
中に入ると、テレビとは別に壁にも映像が映っていた。
「何コレ!?凄い!視聴覚室みたいじゃない!?」
「そうかな…?この機械で曲入れて歌うんだよ」
「何の曲でもあるの!?ちょっと待ってね!えっと…私最近だとこの曲が好きでね!」
初めての空間で柄にもなく興奮が止まらなかった。
武蔵君にスマホに入れている曲を見せた。
「あぁ、この曲俺も好きだよ」
「本当?どうやって入れるの?」
「入れてあげるから歌いなよ」
武蔵君は優しく笑うとタッチパネル式の機械で曲を探してくれて予約をしてくれた。
……武蔵君が笑う顔好きだなぁ。
曲を入れると部屋全体が少し暗くなって映像と一緒に前奏が流れ始めた。
すごい!カラオケがこんな所だったなんて!
「楓ちゃん、歌始まってるよ」
「アレ?歌わないじゃない!」
「楓ちゃんが歌うんだよ、ほらマイクで」
「え!?歌ないと、どの部分かわかんないし、恥ずかしいよ!武蔵君、先に歌ってみて」
「ふはっ!初めてだとそっか!じゃあ、先に歌うよ?」
武蔵君はマイクを持って歌い始めた。
「え…うまっ!武蔵君歌手なの!?」
女の人の歌なのに全然違和感なく歌いこなしてる…!