慶ちゃんが抱いてくれない!
曲が終わるまで武蔵君の歌声に聞き入っていて、曲が終わると私は拍手をしていた。
「すっごい上手だった!武蔵君の歌もっと聞きたい!」
「褒め過ぎだよ、最近はみんなカラオケ行き慣れてるからみんなこんなもんだよ。ほら折角カラオケ来たんだし楓ちゃんも歌おう?」
「うーん……でも私は武蔵君みたいに上手に歌えないし……歌が上手くなる魔法薬探してみようかな」
「別に上手く歌わなくても楽しければ良いんだって、一人で歌うの恥ずかしかったら一緒に歌おう?」
「そういうものなのね、そしたら武蔵君が一緒に歌える歌を……」
初めてのカラオケがすっごく楽しくて延長までして、カラオケで夕飯をすまして映画の上映時間の直前まで楽しんでしまって、その後見に行った映画も昔見た時よりも映像がすごく綺麗で感動した。
帰り道でも今日の楽しかった興奮がおさまらなかった。
「はぁ……すっごく楽しかった」
「ふふっ!まさか楓ちゃんがあんなに楽しんでくれると思わなかったよ」
「だって、カラオケの採点機能もすごかったじゃない!?武蔵君の歌が100点じゃないのは納得出来ないけど」
「あの採点100点取るのはかなり難しいからね。カラオケも映画もさ、学校終わってからでも行けるしまた行こうよ」
「うん、是非」
武蔵君が家まで送ると言ってくれたから家に向かってるんだけど……
今日本当に楽しくて1日があっという間で……武蔵君の言動にたくさんドキドキした。まだ一緒にいたい……。
マンションに着くといよいよ武蔵君と別れるのが惜しくなった。
また明日学校で会えるのに。
「家ここ?」
「……あの、折角ここまで来てくれたしお茶でも飲んでく?魔法薬の本とかもあるし、泊まっていってもいいよ?」
「いや、今日は帰るよ」
「そっか……そうだよね……もう遅いし疲れてるよね」
やだ……私ってば……がっつき過ぎた……。
今日は年甲斐もなくはしゃぎ過ぎちゃったし、引かれたかも。
「……本当は楓ちゃんとまだ一緒にいたいし、泊まっていきたいけど……楓ちゃんの部屋行ったら手出さない自信ないし」
「む、武蔵君って……誠実な草食に見えて案外肉食じゃない?」
「ははっ!本気で好きな子相手だとそうなるみたい。自分でも知らなかったけど……今日デートどうだった?俺の事異性として意識してもらえた?」
武蔵君はいつの間にか私の手を握っていてそう聞いてきた。