慶ちゃんが抱いてくれない!
「そうだ!飲みやすいように水とかで割ってみたら!?」
「真穂……一応化学部員だろ?何の為に俺が分量計算して製薬したと思ってるの?」
「えー!だって薬飲む時は水で流し込むじゃん」
製薬をする時私はいつも武蔵君に言われた通りの分量と手順で作っているだけだ。
武蔵君のノートには私にはちんぷんかんぷんの化学式が並んでいる。
昔おばあちゃんが魔法薬を作ってくれた時は適当に混ぜてた様な気がするけど武蔵君はいつも念入りに魔法薬の本を分析していた。
今までの簡単な薬はそれで成功してきた。
「…よし。飲む!こんな見た目だけど飲んで死ぬ様な毒薬は入ってないし!」
「え!本当に飲むの?…あっ!!」
武蔵君は鼻をつまんでグイッといった…
こんなところで男気出すなんて。
「うぇ……うぅ……これは…気持ち悪…」
「大丈夫!?やっぱり吐き出した方がいいよ!水道まで歩ける?」
武蔵君は口を押さえて床に座り込んでしまった。
やっぱり飲んだらまずかったんだ。
私じゃ武蔵君の事運べないし、どうしよう…
蹲る武蔵君の背中をさする事しか出来ない。
そうだ!慶ちゃんを呼ぼう!
「今、慶ちゃん呼ぶね!」
こんな事してて慶ちゃんを呼んだらあとですごく怒られそうだけど……
机の上にあるスマートフォンを掴むと同時に武蔵君に手を掴まれた。
武蔵君は潤んだ瞳でで私を見ながら首を横に振った。