唯くん、大丈夫?
九条唯の力が強いのか斉藤くんはされるがまま。

…確かに斉藤くんの顔、めちゃくちゃブスで面白い。



「…ブッ、あはは!やめてやれよ九条!」

「そうだよ!斉藤くん喋れなくなってるぞ!」


静観してた周りが堪えきれず笑い出す。

ようやく九条唯の手から逃れた斉藤くんが「いてーな!何すんだよ!」と凄むと

「待って。もう少し面白くできそう」

九条唯がまた真顔で斉藤くんの顔に手を伸ばす。

「な!?や、やめろ!さわるな!」

斉藤くんが私の腕を掴んで「行くぞ!」と廊下へ走り始めた。


斉藤くんに引っ張られながら振り返ってみると

爆笑する友達に肩を組まれながら、無表情で別の友達を変顔にさせてる九条唯。



…変な人だ。

もしかして、空気壊さないように助けてくれた?
でも心から楽しんでそうだったし…意識してない?
どっち?


九条唯。

…唯、くん。


遠くなっていくその姿が見えなくなるまでずっと、目が離せなかった。
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