唯くん、大丈夫?
甘い煙。
「会いてぇ」
不意に、本音が溢れた。
やけに眺めのいいベランダで、どこからか花の香りがしたからだ。
隣から空に向かって吐きだされた電子タバコの真っ白な煙が、風に運ばれて消えていく。
「そうかー」
最近また耳のピアスが増えた歩くんが、柔らかい声色で相槌を打つ。
その優しさに押し出されて、これまで腹の奥にしまってた弱音がどんどん漏れていく。
「もう1ヶ月も会ってない」
「そうか」
「電話じゃ足りねー」
「そうか」
「触りたい」
「だろうな」
「勉強飽きた」
「だよな」
「ムラムラする」
「手伝おうかー?」
「触んな変態」
股間に置かれた手をすかさず叩いて退ける。
「ノリ悪りぃなー」
変態はハハッと笑うと、手すりに肘をついてまたピンクゴールドの電子タバコを加えた。