唯くん、大丈夫?
夜風が心地良い。

車通りがほとんどなくなった市街地を速度を上げて抜けていく。

バイク特有のエンジン音が夜の街に響いて、なんとも言えない爽快感を感じる。



「わはは!楽しいかも〜!」

「はしゃいで落ちんなよ」

「はーい!」



バイクは市街から住宅街を抜けて、この街唯一の山の中に入った。

真っ暗な山中には街灯がほんの少しあるだけで、ちょっと怖い。


どこ行くんだろう…?


私は唯くんを掴む手にきゅ、と力を込めた。


「…」


唯くんが右手で私の手をグッと自分のお腹の方に引っぱって、私は唯くんの背中にピッタリくっついてしまう。


「!」

「もう着く」

「う、うん…!」


…唯くんの背中、あったかい。


怖いドキドキと、キュンのドキドキがごちゃまぜになって、
私は平静を保とうとただただ猛スピードで流れゆく地面を見つめた。



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