唯くん、大丈夫?
そのまま程なくして、唯くんは少し拓けた場所でバイクを停めた。

ただ車を停めるためだけに作られたらしい何もない場所。

あるのは、



「……わ、わ、わ…!!」



広い広い満点の星空の下

真っ暗な闇に包まれる山の木々の先に

春寝市の街が放つ光、光、光。




小さな光の粒がたくさんの、キラッキラの夜景。



「すごい!すごい!唯君!すごいよ!」



ふ、と口角をあげる唯くんが、興奮で取り忘れてる私のメットを外してくれる。



「昼に通りがかってたまたま見つけた」



柵の方へ駆け寄って光の一つひとつに目を向ける。


「きれー…」


柵に手を置いて見惚れていると唯くんが横に並んだ。





「すげーな」




ザァッと風が吹いて唯くんの髪が揺れる。






う、わ





きれい








その横顔から目が離せないでいると、唯くんが「ん」と何かに気づいた。


「…!」


見ると、遠くにある大きな川の方で一筋の光が登っていく。



ヒュルルルル…




「え、わ、わ!!」







満点の星空の中に、

パッと

丸い花火が咲いた。






遅れてドォ…ン!という音が夜空に響き渡る。



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