唯くん、大丈夫?
そのままきゅ、と包み込まれて、私は息をのんだ。
「…」
何も言わない唯くんの心臓の音がトクン、トクン、と背中に伝わる。
花火がまたひとつ、ふたつ咲いた。
夏の夜風と唯くんの体温が心地良い。
もう
これは
「……唯くん」
「うん」
「どうしよう」
「うん…?」
「幸せが、過ぎる」
…凄い
今年の夏は思い出づくりなんて諦めてたのに
たった一晩で
今まで過ごしてきたどんな夏よりも一番濃い夏になってしまった
「こんなの、困る」
きっと一生忘れない
この夜空もキラキラの街も
またひとつ咲いては消えていく尊い花火も
「ずるいよ…突然来て、突然、こんな」
背中に感じる唯くんの熱も
強くて優しい腕も 匂いも
きっといつかまた
この夏の夜風と一緒に思い出す
絶対忘れない
一生忘れない
「幸せが過ぎて、帳尻が合わないよ」
また涙がポロッと落ちた。
唯くんが私の顔のすぐ横でハッ、と笑って
「…俺も」
と、小さくつぶやいた。