唯くん、大丈夫?
「ごめん……今は……行かないでほしい」
そう言って相変わらず震えてるみね君に
私は全身の力が抜けて動けなくなった
中学生の自分が
この人を置いてっちゃいけないって訴えてくる
まるで昨日のことのように思い起こされる痛みが
何度も何度も訴えてくる
「ごめん……ごめん」
「…」
5年前の後悔と、
濡れて重くなったブレスレットが、
頭の中をグチャグチャにする。
唯くんが残していった紙袋にビタビタと雨が打ちつけてる。
『優花はピンクだろ』
そう言って唯くんが見つけてくれたスニーカー。
ブレスレットの色と一緒にしようって色違いで買ったスニーカー。
耳元でみね君が何度も謝るのを聴きながら
涙と雨で歪む視界の中で
どんどん、どんどん、小さくなっていく大好きな背中を
ただ静かに、見守るだけで
行かないで
行かないで
そう心の中で何度も言うだけで
私はまた、口に出すことができなかった。