唯くん、大丈夫?
シーン…と静まり返る教室。



そこにいる全員の視線を一身に浴びる唯くんが、その目を斉藤くんから私に移す。

そしてまっすぐ私を見つめたまま歩いてくる。

絶対に獲物を逃さない、という肉食動物に似た、その強い目。



「へ、な、なん?ゆ…?」



私はこの困惑した気持ちを言語化することもままならず、

今から食べられようとする草食動物みたいにオロオロ後退りする。

そんな私を唯くんは呆気なく捕まえて腕を引っ張った。


「…わわッ!」


バランスを崩した私を胸で受け止めると、グッと肩を抱いてみんなの方に向き直る。

その顔は、私の知ってるいつもの無表情の唯くん。



唯くんが、スゥー…と息を吸って声を張りあげた。
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