唯くん、大丈夫?
よろける俺に美琴がなんでもない顔で言った。
「あ、ごめん。ちょっと強く入っちゃった。」
「ゴホッ。…ちょっと…?」
…純くん。
こんな美女の皮かぶったイノシシみたいな女と結婚して本当に大丈夫?
病み上がりの人のパンチとは思えないんだけど。
「優花をナメすぎ。」
「え?」
俺を見下ろす美琴の目は怒気を孕んでる。
「例え唯がめんどくさい束縛男だろうと、自己中でワガママな子供だろうと、どう受け止めるかは優花が決める。
誰の隣で笑いたいかは優花が決める。
優花の幸せは、優花が決めるんだよ。」
「…」
言葉を返せず俯く俺に、美琴がまた構える気配がした。
「!」
バシンッ。
咄嗟に構えて美琴の拳を掌で止めた。
「…やるじゃん。ブランク7年の割には。」
美琴が軽く口角をあげる。
「…そっちは空手に先手なしって言葉忘れたの?」
直後、美琴の足がさっきとは逆の脇腹目がけて猛スピードで飛んできて、身構える。
「!」
ドスッ。
「イッテ!」
フェイクをかけられて太ももに入った。