唯くん、大丈夫?
ずっと羨ましくて大嫌いだった男がキレ散らかすのを眺めながら


頭の中には


まだ彼氏彼女だった頃の尊い日々と

先週見た優花の笑顔や泣き顔

俺を見る苦しそうな切ない顔が

凄い勢いで駆け巡っていて
















「…」

















なんの前触れもなく、




左頬に一筋の涙が伝っていた。
















「…好きな人いるんだって?」



相変わらず機嫌の悪そうな長嶺光が、俺のキャップを取って静かに聞いた。



「その好きな人に、はやく気持ち伝えた方がいいんじゃないの?唯くん。」



「…」












…行かないと。



早く、行かないと。











俺は手に持っていたまぐろプリンの袋を長嶺光に渡す。



「あ?なんだこれ…まぐろプリン?」



「あげる」



反応に困る長嶺光をよそに、

俺は濡れた頬を拭って、目を開く。











誰もがスカして涼しい顔で闊歩する都会のど真ん中






俺は、



脇目も振らずに走り出した。






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