唯くん、大丈夫?
デジャヴ。
バイト終わりの世界橋駅、13時8分。
「……」
私は今、駅の壁にデカデカと貼られたポスターの前で、口をぽかんとあけて固まっている。
そこには、キスマークだらけの背中に、女の人の手を巻きつかせて、
顔だけ横に向けてこちらを流し見するセクシーな黒髪イケメン。
その彫刻みたいに綺麗な背中の横には『愛ある誘惑の仕方』とか、『色香をつくる。』とか、
それっぽい文言が明朝体で書かれていて、
整いすぎてるお顔のバックにはamamという誰もが知ってる雑誌のタイトル。
「え…?ん、…んん?」
私はギュッと目を瞑ってから、カッと見開いてもう一度そのポスターを確認する。
背中の形やほくろの位置
バランスの良すぎる鼻、唇
そして誰もが見惚れる、三白眼
私はゴクン、と息を飲んだ。
「……唯くん?」