今日から君の専属マネージャー
報告書9.突撃取材
次に目が覚めた時には、部屋の中にはたっぷりと日差しが注ぎ込んでいた。
それは昼時の日差しに似ていた。
ハッとしてスマホを探し時間を確認すると、まだ朝の6時半だった。
まだと言っていいかは、今日のスケジュールを確認してからだ。
私は寝ぼけ眼でバタバタと慌ただしくスケジュール帖を探す。
鞄をひっくり返すと、詰め込まれたものがガラガラと外に飛び出す中で、最後にスケジュール帖がボトンと落ちる。
ページをめくって今日の予定を確認すると、私はほっと胸をなでおろした。
今日は午前中の仕事がない。
美容院の予約とか、クリーニングの仕上がり日とか、そんなプライベートなものばかりだった。
「もう、びっくりさせないでよ」
私は早起きの太陽に向かって安堵のため息を漏らした。
その太陽の光に、自分の手をかざした。
その手に鮮明に残る、昨日の記憶。
私はのったりと涼ちゃんのそばに戻った。
そして、ソファに頭を預ける。
涼ちゃんの健やかな寝顔。
規則正しい寝息。
胸の上下運動。
それをまったりとしながら見つめていた。
それだけで、もうひと眠りできそうだった。
だらんとなった手をじっくりと見つめた。
その手で包まれる心地よさを思い出した。
両手で包み込めないほどの大きな手。
血管の浮き出た働き者の手。
色っぽい長い指。
形の良い爪。
それらをそっと、指先でなぞっていく。
時々ぴくぴくっと体が動くと、心臓がどきんとなる。
それでもやめられない。触れていたい。
「涼ちゃん」
私から、甘い声が漏れる。
「好き」
甘ったるい吐息がふわふわと消えていくのを聞き届けた瞬間、「ぐるるるるるるる」という大きな音が後を追う様に唸りだす。
その音に、涼ちゃんの寝顔が一瞬険しくなる。
「うっ……」と声が出そうになるのを押さえて、私はその場をそうっと離れた。
空腹には、勝てぬ。
__朝ごはんでも買ってこようかな。外の空気も吸ってこよう。