今日から君の専属マネージャー
「はいはい、ごめんなさいね。うちの妹になんか用?」
声の方をパッと見ると、めちゃめちゃさわやかなイケメンが立っている。
短い黒髪に、吊り上がった細い眉毛とセットのような、きりりとした目元。
両手には、松葉杖。
その松葉杖で私の目の前の記者二人を「しっ、しっ」としている。
足にはぐるぐる巻きにした包帯がまかれている。
「よ……吉田さん?」
私のその小さな声に、吉田さんの厳しい視線が送られる。
吉田さんは首を素早く横に振る。
「あなたは……羽瀬涼也さんの、マネージャーさん、ですよね?」
「よくご存じで。
そしてよくお気づきになりましたね。こんなにイケメンに変身したのに」
「そりゃあ、ずっと羽瀬涼也のネタを追っかけていますから。
マネージャーの顔ぐらい覚えますよ。
マネージャーさんがここに来たなら話は早いですね。
彼女は羽瀬涼也の彼女なんですか? 妹なんて嘘でしょう?
あなたが嘘をつくということは、この女性はやはり庇うほどの価値のある特別な存在という認識をしてもいいということですよね?」
「先ほどの写真、見せていただけますか?」
そういうと、記者の一人が吉田さんに写真を渡す。
吉田さんは松葉杖でうまいこと体を支えながら、落ち着いた様子で写真を一枚一枚見た。
「なるほど」
「立派な証拠写真でしょ?」
「入手先はどちらから?」
「そんな野暮なこと、言えませんよ」
「ですよね」
「で、どうなんですか? 事実ということで、掲載決定でよろしいですか?」
「申し訳ありませんが、今はお答えできません。
なにぶんこの足のせいで、ただいま業務停止中なもので。
まずは本人確認、そして事務所を通さなければ、何もお答えできません」
「では、いつ頃答えていただけるのですか?」
「こちらから折り返し、ご連絡いたします。それまでお待ちください」
「行くよ」と吉田さんの小さな声が、私の耳に届いた。
「私たちにも締め切りがあるんで、そんなに待てませんからね」
歩き出す吉田さんの背中に、記者は大声でそう言った。