今日から君の専属マネージャー


「この間の撮影の見本が出来上がったから、美鈴ちゃんにも確認してもらいたくて。

 ほら、顔出しNGじゃん。

 だから一応、こんな感じで大丈夫かなって」


「ああ、うん。わざわざありがとう」


目の前に差し出された薄めの冊子を、私はそっと手に取った。

そしてパラパラとめくっていく。

まずは涼ちゃんと楓君のツーショット。

それから、涼ちゃんと夏木さんのツーショット。

ここまでで、もう涙が出そうになる。

何の涙かわからない。


__涼ちゃん、頑張ったね。

__出来上がって感動。


__この日も私は何もできなかった。

  涼ちゃんの熱に気づけなかった。

  マネージャー失格。

  そんな苦い思い出。


__マネージャー、クビ。


確かにどれも涙の理由なんだけど、違う。

一番の理由は、


__涼ちゃんに、会いたい。


涙をこらえながら次のページをめくる。

次は、私と楓君のツーショットだ。

ボブヘアがふわりと揺れて嬉しそうだ。

楓君の手がそっと私の背中を支えている。

指を絡めながら歩く姿も、体を寄せ合う姿も、楓君にふわりと持ち上げられた、あのシーンも、楓君の柔らかな笑顔と、緩やかな弓なりの瞳が私に向けられている。

だけどどの写真の私も、どんな表情をしているかはさっぱりわからない。

当然だ。

後ろ姿だけなんだから。


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