今日から君の専属マネージャー
とばっちりなんて言ったらお母さんに怒られそうだけど、これが最近の私の寝坊から始まる遅刻の理由だ。
お母さんはいいよ、遅くまで起きてても、翌日とりあえず私を送り出したら、そのあとはパートの時間まで自由なんだから。
二度寝するなり、続きを見るなりできるんだから。
お母さんが簡単に並べただけの朝食自炊セットに見向きもせず、私は家を飛び出した。
朝は時間がない。
パジャマから制服に着替えるのが精いっぱいの生活を続けていると、自ずと手を抜くところが決まってくる。
まず私は化粧をしない。
学校にメイク道具を持っていくこともしない。
私だって高校に入学したての頃は、女子高生にあこがれてメイク道具一式を買いそろえたこともあった。
だけど私にそんな時間はない。
それにしょっちゅう忘れ物をする私に、メイク道具を持ち運ぶという習慣は合わない。
メイク道具もいつの間にかどこかにいってしまった。
おそらく部屋のどこかに埋もれている。
化粧をばっちりして登校している同級生、先輩、後輩が信じられない。
どうしたらそんな時間ができるのだろう。
それから私の髪形も、いつのころからかずっと今と同じ髪型だ。
首筋のあたりで短く切った、ショートボブなる髪形をもう何年もキープしている。
基本髪をとく必要はない。
寝ぐせのままでも、風になびいて乱れても、辛うじてふんわりとセットしたボブに見えないことはない。
そして何より、水でなでつけるだけで整えることができる手軽さ。
ボブは私の最高のパートナー。
ぼさぼさ頭なんて言わせない。
今日も私は相棒のショートボブを乱して走る。
手に握ったスマホの時刻ばかりが経過して、距離はちっとも稼げない。
これもまた、私の遅刻の原因の一つだ。
私は走るのが遅い。
基本、運動神経がよくない。
持久走もいつも途中で歩いて、なかなか完走しない。
体力テストの50メートル走は、高校生にして11秒台とありえないくらい遅い。
長距離でも短距離でも、ソフトボール投げでも上体起こしでも、とにかく運動にまつわるものはすべて、私は失速が早いのだ。
学校までは歩いて20分。
走ると30分。
歩いた方が早いけど、急ぐときは私だって無意識に走る。
ちなみに、自転車には乗れない。
なので私の通学手段は、もっぱら「走る」が選ばれる。