今日から君の専属マネージャー
「じゃあ、ここに座って」
私はホームにぽつんと置かれた青いベンチに座るよう促した。
「え?」と戸惑う涼ちゃんを、「いいから座って」と私はほとんど無理やりベンチに座らせる。
そして腕を広げて大きく息を吸ってから、その勢いのままに、目の前の頭に手を伸ばした。
そうして私の胸元に、涼ちゃんの頭がすっぽりと収まった。
やってしまってから、心臓が急にドクドクと騒ぎ始めた。
指先が震え始める。
その指先にきゅっと力をこめて、キャップ越しにゆっくりとその形の良い頭をなぞる。
何度かゆっくり撫で下ろしていると、緊張の中に不思議と愛おしさが混ざりあう。
強張っていた指先が、徐々にほぐれていく。
「よ、よく、できました」
何とか出した声は、小さくて、震えていた。
私たちの横を、特急電車がものすごい勢いで駆け抜けていく。
遠ざかっていくその音を、私は聞こえなくなるまで聞き届けた。