今日から君の専属マネージャー
急いで着替えてダイニングに向かうと、見たこともないような豪華な朝食が並んでいた。
__え? これ、お母さんが作ったの? ウソでしょ?
きれいな焼き目のついたトーストに、プルンと黄身が光る目玉焼き。
ちょうどいい焦げ目がついて、口に入れなくても程よいカリカリ感が伝わるベーコン。
デザートのバナナにもちゃんと包丁が入れてあり、傍らにはフォークが準備されている。
きれいに並べられたテーブルに目を輝かせていると、「あれ? 嫌いなものあった?」と涼ちゃんが聞いた。
「勝手にキッチン使わせてもらっちゃったけど、よかったかな?
材料もあるもの使わせてもらったし」
「え? もしかして、これ全部涼ちゃんが作ったの?」
「そうだけど」
「料理、できるんだ」
「これぐらい誰にでもできるだろ」
いや、できません。
できませんから。
うちの女たちにはこんな豪華で美しい朝ごはん、こんな朝早くから用意できませんから。
パンは真っ黒、目玉焼きはかなり固め、ベーコンはゴムみたいで嚙み切れない。
バナナは自ら房からもぎって食べてますから。
「早く食べろよ。遅れるぞ。いただきまーす」
涼ちゃんは礼儀正しく手を合わせてから箸に手を伸ばした。