今日から君の専属マネージャー
「美鈴、ほんとに早くしろ。てか、もしかしてその格好で行くの?」
私の動揺をかっさらうような厳しい声が飛ぶ。
「え? ダメ?」
私のタンスの中では一番上等な服だ。
一番大人っぽくて、私の思う「ちゃんとした服」。
それに今日は自分なりにメイクもしている。
昨夜何とか探し出して久しぶりの再会を果たしたメイク道具を使って、自分なりにメイクをしてみた。
そのために、遅くまでメイク動画をじっくり研究した。
服装も大人の女性のファッションをネットで研究して、自分の持ち物の中からそれっぽいものを選んだ。
だけど涼ちゃんは「はあ」と小さくため息を漏らして、自分の荷物が置かれているリビングに向かう。
「そんなことだろうと思って、昨日買っといたから、これ着ろよ。
メイクと髪は、後で俺がやり直してやるから」
そう言って手渡された袋を覗くと、スーツやブラウスが入っていた。
「え? 涼ちゃん、用意してくれたの?」
「昨日ちょっと時間あったから。サイズ、合うかわかんないけど」
涼ちゃんは私と視線を合わせずに、ぼそぼそと早口で言った。
その姿を私はぽうっとなって見つめた。
__涼ちゃん、怒ってたはずのに。それでも私のこと……。
「昨日のは、別に本気で言ったわけじゃないから。
ほら、早く着替えろよ」
「う、うん」
言われるがまま部屋に戻って着替えなおす。
涼ちゃんが用意してくれたのは、丸い襟元にかわいらしい刺繡のラインが施されたグレーのジャケットと、肩のあたりがふんわりしているすべすべとした素材の白い半そでブラウス、そしてふんわりとした黒のスカートだった。
ちゃっかりストッキングまで用意してくれている。
そして、シンプルだけど光沢感があり、しっかりと磨かれている黒いパンプス。
腕を通すと、今まで着たことのない着心地にうっとりする。
ブラウスなんて、とろとろととろけてしまうような夢のような感触だった。
サイズもぴったりだ。
ジャケットを着ても暑苦しを感じないのは、袖の途中が折り返せて七分丈になる機能も備えているからだろうか。