今日から君の専属マネージャー

真剣に話す涼ちゃんの瞳に、私の間抜けなぼんやり顔が映る。

すごい。

偉い。

同い年とは思えない。

厳しい芸能界で生きてきたからこその言葉なのか、それとも生まれつきそういう性格なのか。

夏休み終盤まで課題をやらなくても、「最後には何とかなるよ」なんて余裕だった自分が情けない。

実際余裕だったことはないし。

「学力なし、女子力なし、体力なし、自己管理能力なし」、なんてへらへらしながら公言している自分が恥ずかしい。


__もしかして、世の中の17歳って、実はこんなにしっかり者なの?

  ちゃんと考えて生きてるの?


「って偉そうに言ってるけど、俺だってまだ先のことは全然決めてないよ。

 だから受験するかどうかも、決めてない。

 でも急にしたいって思ったときに、手遅れになるのは嫌じゃん」


私はもう、何十歩も涼ちゃんから後れを取っているような気がする。

いや、気がするんじゃない。後れを取っているんだ。


「で、美鈴は大丈夫なの? 課題とか、学校の勉強とか。

 進路とか、考えてるの?」


「いや、えっと、私は……」


あんなしっかりした意見を言われた直後に、「何も考えてません」とも言えない。

学校の成績はと言えば赤点だらけだ。

うちの学校は赤点をとっても追試とか補習がない。

その分、赤点を取った人にはそれなりの課題が与えられる。

それをやるのも「自由」という名の「自己責任」。

良くも悪くも、自由な校風。

だから私には、いつまでたっても「まずい」という自覚が生まれない。


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