今日から君の専属マネージャー
気を失った後のことは全く覚えていない。
もちろん鼻血を出したことも。
自分が気を失っている間に、一体何が起こっていたのか、想像するだけで恥ずかしい。
乙女に鼻血のことなど思い出させないでほしい。
「だから、ごめん。無理させて」
昨日のことが再び思い出されて、体中に熱が戻ってくるのを感じている私の目の前で、涼ちゃんは本当に申し訳なさそうに謝る。
その姿に、胸の奥の方がちくりと痛む。
私は態勢を立て直して涼ちゃんと向き合う。
「涼ちゃんは何も悪くないよ。勉強、教えてくれてありがとう」
正直、一つも頭に残っていないんだけど。
「それに、ずっと付き添っててくれたんだね。
看病してくれて、ありがとう。
そのせいで、今日寝坊して慌ただしくなったんだし」
私の言葉を聞いて、涼ちゃんがなぜかふっと笑った。
よくわからず疑問の目を投げかけると、その答えが返ってきた。
「まさか、俺のほうが美鈴に起こされるなんて思わなかったから」
そう言ってくすりと笑った。
「起こしてくれて、ありがとう」
私として起こしたつもりはなかったけど、そういった時の穏やかで、だけどどこか意地の悪い男の子の表情をする涼ちゃんに、また胸が爆ぜる。
__「好き」
耳に残る、声の記憶。
だけど妙な実感があって、私は思わず両手で口を押えた。
__今のは、口に出してないよね?
涼ちゃんの方をちらりと見ると、私を不思議そうな顔で見ている。
「どうした?」
「いや、何でもない」
私は何でもないふりをして、涼ちゃんから少し距離をとった。