今日から君の専属マネージャー
「そういえばさあ……」
ぼんやりしている私の耳に、涼ちゃんの仕事用の声が届いてはっとなった。
「もうすぐお盆休みだけど、美鈴は何か予定あるの?」
「え? うーん、たぶん毎年の感じだと、お母さんの実家に遊びに行くぐらいかな」
「そっか。俺仕事入ってるけど、半日仕事が多いから一人でもなんとかなるし、休んでくれていいよ」
「そういうわけにはいかないよ。私マネージャーだし」
「無理しなくていいよ。今回のこともあるし。少し休んだ方がいいよ。
吉田さんみたいなベテランならまだしも、大量の課題抱えた女子高生が夏休みの間中この仕事するってハードだし。
少し休んで、課題でも進めろよ」
「そんな心配してくれなくていいよ」
正直、自分の課題の進み具合はかなり不安を覚えている。
それを涼ちゃんも本気で心配しているのだろう。
だけど本音を言えば、私は涼ちゃんのそばにいたかった。
涼ちゃんのそばで、涼ちゃんの仕事を見ていたかった。
いつの間にか、そんな感情が自然とわくようになっていた。
こんな状況になったきっかけを作ってしまっているのは自分なはずなのに、それが今はラッキーだったとさえ思ってしまうのは、自分勝手だろうか。
だから、たとえ両親がお盆休み中にどこかに出かけると言っても、私はついていく気はははじめからなかった。
涼ちゃんの仕事についていく。そう決めていた。
「そうかあ。……じゃあ、俺、しばらく家帰るわ」
「……え?」
「ほら、家に二人っきりは、さすがにまずいし」
「あ……ああ、そ、そうだね」
思わず声が上ずった。
__そうですよね。男女二人は、まずいよね。
頭ではわかっているけど、あからさまに肩が落ちる。
首も落ちる。
ついでにため息も落とす。
私の体は、なんて正直なんだろう。
そんな私の様子を見て、涼ちゃんはのん気に言う。
「心配しなくても、ちゃんとモーニングコールしてやるから、安心しろよ」
涼ちゃんはにっと笑った。