今日から君の専属マネージャー


「それでは撮影始めます」


スタジオの天井を貫くようなその声で、スタジオには一気に緊張が張り巡らされた。

カメラのカシャンという硬質な音が、スタジオの高い天井によく響いた。

涼ちゃんの仕事現場なら、もうこの数週間で何度も見てきた。

だけど今日の涼ちゃんは、一味違った。

私の見たことない涼ちゃんだった。

熱のある目線。

艶っぽい唇。

頭の先から爪の先まで、その動きのすべてが色っぽくって、見ているだけでドキドキとしてくる。

唇に置かれた指先、髪をかき上げる仕草、こちらに送る熱い視線。

遠くの方で見ていた私は、思わず後ずさった。

涼ちゃんはカメラを見ているはずなのに、まるで私にその視線を向けているようで。

自意識過剰にもほどがある。

だけど、その視線から逃げようとしても、捕えられて動けない。

荒くなり始める呼吸を整えようと胸に手を置いた。

その指先に、心臓があり得ないくらいドキドキと早く動くのが伝わる。

体中がうずき始める。

吐き出される甘い吐息が、自分のものではないようだ。

こんな自分に、恥ずかしさを覚える。

こんな姿、誰にも見せられないのに、涼ちゃんはまるでそんな私に気づいているように、意地悪い目で私に視線を送り続ける。

思わず、目を閉じた。

漏れ出す呼吸を何とか止めようと、口を両手で抑えた。

体の震えが、止まらない。

うっすらと目を開ければ、また捕らえられる。

動けなくなる。

目をそらせば涼ちゃんの視線から逃げられるのに、私は涼ちゃんから目が離せなかった。


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