今日から君の専属マネージャー
「はーい、お疲れ様です。では十分休憩します」
涼ちゃんは休憩に入ると、すぐに先ほど撮ったばかりの写真を確認している。
そしてカメラマンさんと真剣に話をしていた。
撮影はほんの20分ほどだったけど、涼ちゃんからは大量の汗が流れている。
タオルをもって駆け寄ろうとしたら、私よりも先に、メイクさんが駆け寄ってタオルを渡した。
そしてすぐさまメイクを直す。
お水をもって駆け寄ろうとすると、私の目の前を、「涼也君」というすらりとした声とともに、大人っぽい黒の衣装を着た女性が駆け抜けていった。
胸元はざっくりと開いて、形の良い胸が強調されている。
引き締まったウエストは思わず目でなぞりたくなるほどきれいにくびれている。
太もも辺りからさっとスリットの入ったドレスは誰の目線も釘付けにする。
髪もしっかりアップにして、女の私にも、白いうなじがまぶしい。
彼女は涼ちゃんに駆け寄ると、ふたの開いたお水を涼ちゃんの口元に持って行った。
そのお水を、涼ちゃんはぐびぐびとあおった。
それだけのことなのに、彼女は手をたたいてその行動をたたえていた。
それをぼんやりと見ていた私だけど、急に我に返ってはっとなった。
__あれ? 私、一体、どうしたらいいんだろう。
もう何度も仕事現場に同行しているはずなのに、私は今までどんなふうに仕事をしていただろうか。
どうやって涼ちゃんに駆け寄っただろうか。
どんな顔をして、涼ちゃんの隣にいたのだろうか。
思い出せない。
もしかしたら、ほんとにたいして仕事なんてしていなかったのかもしれない。
名前だけの、「マネージャー」。