今日から君の専属マネージャー


「きれいな人」

「美鈴ちゃん、それ何回目?」

「え?」

「もしかして、さっきから声に出ちゃってること、気づいてない?」

「私、なんか言ってた?」

「きれいな人って、何回も言ってたよ」

「え? うそ」


熱を帯び始める頬を両手で抑えていると、「独り言、でか」と楓君が笑った。


「確かにきれいな人だよね、夏木璃子って。

 あんなきれいなおねえ様を目の前にしたら、誰でもコロッと行っちゃうよね」


楓君の言葉を聞きながら、私はカメラの前で見つめあう二人に視線を移す。

涼ちゃんの長くてごつごつした手と、夏木さんのほっそりと華奢な指先が絡まる。

それだけで、なんだかいやらしさが漂う。

上目遣いで涼ちゃんを見つめる夏木さんの目に、背筋がぞくぞくっとなる。

とろりとして妖艶な目が、涼ちゃんに何かを求めている。

ちょっと突き出された唇は、次の何かを待ち焦がれているようだ。

涼ちゃんもその目と唇にこたえるように、憂い気な目で彼女を見つめ、唇を少しぽかんとさせている。

顔を突き合わせて間近で見つめあったり、腰に手をまわしたり。

危うい場面が目白押しで、子供の私にはもう見るに堪えなかった。

苦しかった。

つらかった。


__そんな目で、他の女の子を見ないでほしい。


さっきまでの彼女への憧れはどこにもなかった。

あるのは、嫉妬心。

思わず二人から目をそらした。

その後も撮影は続いた。

私にとっては苦痛の時間だった。


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