今日から君の専属マネージャー

写真を確認して驚いた。

こんなに多くの写真が、あの短時間で撮られていたことに。

そしてそのどの写真にも、楓君はばっちりと表情を作っていた。

楓君は終始私を気にかけて声をかけ、時にはふざけたりして緊張をほぐしてくれていたはずなのに、その中でばっちり自分の仕事もこなしている。

遊びながらも軽くポージングを作ったり、カメラ目線をしたり、表情を変えたり。


__これが、プロなのか。


「……すごいね」


楓君への賞賛が思わず口に出た。

「ん?」と不思議そうな顔で私に視線を向ける楓君に、私は体を向き直した。


「すごいよ、楓君は」

「え? 俺?」

「だって私の面倒見ながら、きっちり自分の仕事こなしてて。

 すごいね。プロだね。

 私、楓君を見る目が変わったよ」


「面倒見るって……。てか美鈴ちゃん、一体俺をどんなふうに見てたの?」

「ちょっと、いや、かなりチャラそうな感じ」

「えー、俺だって真面目なんだけど」


私たちのやり取りに、周りのスタッフさんたちからも笑い声が上がる。


「で、美鈴ちゃんはどうなの?」

「え? 私?」

「ほら、ちゃんと自分の姿を見てみなよ」


楓君に促されてモニターをじっくり見入ると、そこにいる自分の表情に、思わずうっとりしてしまった。


__これ、私? 私、こんな顔してた?


自分の仕草や表情に、ドキドキしてしまう。

きっとカメラの性能がいいんだ。

だって私、こんなんじゃ……。


「カメラは真実を映し出す」


楓君がぽつりと言った。


「かわいかったよ、美鈴ちゃん。ほんとに」


そう言う穏やかな表情に、またどきんと胸が跳ねる。 


「後ろ姿だけなんて、もったいないなあ」


そう言いながら、楓君は次々と写真を確認していった。


< 89 / 136 >

この作品をシェア

pagetop