今日から君の専属マネージャー
それにしても、あつい。
暑苦しい。
夏に抱き合うとこういうものなのだろうか。
こんな現実的なのだろうか。
__ううっ、あつい。重い……。
「あつ……い……って、あっつ。ほんとにあっつ。
りょ、涼ちゃん?」
ようやく異変を感じて、私に全体重を預け始めた涼ちゃんの体をぐいっと引き離す。
なんとか涼ちゃんの顔が見えたと思ったら、涼ちゃんは目をつむったままぐったりとしている。
私に体を引き離されてもなお、私に寄りかかろうとする。
「涼ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
涼ちゃんの顔は赤かった。
汗も尋常じゃないくらい出ている。
息も荒々しい。
「どうしよう、救急車呼んじゃう? 誰かに、助けを……」
「救急車なんて大げさだから。他人も呼ばなくていい。帰って寝れば治るよ」
涼ちゃんはパニックになる私に、落ち着いた声でそう言った。
だけどその声はかすれて、弱々しかった。
「帰るって、帰れないじゃん。こんな体でどうやって動くの?」
そう言う私は涙声になっている。
目にもいつの間にか、涙がたまっている。
ああ、情けない。
私、マネージャーなのに。
どうして気づかなかったんだろう、涼ちゃんがこんな体になるまで仕事してたこと。
きっと誰にも気づかれないように、隠してたんだ。
だけど私はマネージャーなんだから、私だけでも気づかなきゃいけなかったのに。
私はマネージャーの仕事はそっちのけで、かわいい衣裳や普段と違うメイクにときめいて、素人のくせにモデルなんかして、みんなからの「かわいい」にのぼせ上って。
ほんと何やってたんだろう。
涙があふれ出そうになる。
どうしていいのかわからない。
何をしたらいいのかわからない。
何のために自分がここにいるのかわからない。
何もできない自分が嫌になる。
ぼろぼろと涙があふれ出てしまったその時、頬を伝う涙を、指先がそっと撫でる感触があった。
「ほんとに、大丈夫だから」
熱のあるとろりとした瞳で、涼ちゃんは私を見つめた。
そして、ふっと目元を緩めた。
こんな事態だというのに、そんな表情、ずるい。
どこまで優しいのだろう。
こんな状態でも私を安心させようとする涼ちゃんの心意気に、また涙が追加される。