泡沫の瞳
────私は確かに杏李を裏切ろうとした事がある…。

だけどそれは〝過去〟のこと。
今ではもう杏李の事が大好きだし、本当に一緒にいたいと思ってる。






「…また唇腫れてる…」

杏李にそう言われたのは、放課後の帰り道。また水道水で何度も唇を洗った私は、「ほんとう?」と、無理矢理笑顔を作った。

唇が、ヒリヒリする…。


「リップクリームないの?無かったら買ってこようか?」

「大丈夫だよ、家に帰ったらあるから」

「なんか、いつもより元気ないね?」

「そうかな?普通だよ」

「無理しちゃだめだよ」


柔らかく微笑んだ杏李は、「最近、悪い虫が多いみたいだから」と、私の唇にふれた。


悪い虫……?


「え?」と、呟けば、優しく頬にキスをしてきた恋人…。


「何かあったら相談するんだよ?」


そう言ってきた杏李は、いつもと変わらず。


「俺はいつでも、美緒の味方だから」














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