たとえ9回生まれ変わっても




喉が乾いて、夜中にふと目が覚めた。


お茶を飲もうと部屋を出たとき、部屋の外から音がした。


1階の玄関のドアが開く音だ。


時計を見ると、12時を過ぎている。



こんな時間に誰かが家を出たのだろうか。


窓を開けると、そっと冷たい風が入り込んできた。


暗闇の中に、小さな人影が見えた。


少し大きめの白いシャツ。

ふわふわと風に揺れるやわらかい髪。



「紫央……?」



淡い月明かりにぼんやりと照らされた後ろを見つめる。


紫央はとなりの部屋で寝ているはずだ。


だけどあの後ろ姿は、どう見ても紫央だった。


こんな時間にどこへ行くんだろう。



紫央もわたしと同じように、何かを探しているんだろうか。


気になったけれど、追いかけることはできなかった。


どうしてか、追いかけてはいけないような気がしたんだ。




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