たとえ9回生まれ変わっても


自転車を漕ぎながら、おばあちゃんと紫央の会話を思い出す。

『蒼乃のこと、よろしくね。わたしの孫を、ちゃんとそばで見守っていてちょうだいね』


『はいーー約束します』


紫央は、約束しますと言った。

でも、シオがうちにいるのは、期間限定のはず。

きっと、いつかは出て行ってしまう。

いつまでだろう。

今日、それとも明日。

ある日突然、紫央はわたしの前から消えてしまうような気が、ずっとしていた。

紫央の存在が私の中で大きくなればなるほど、その予感はどんどん大きくなっていく。

さっき、もうひとつ、聞きたかったことーー。


昨日の夜、どこに行ってたの?

何をしに外に出て行ったの?


ーードクン。

嫌な音が胸を打つ。

不安なんだ。

紫央が出て行ったきり、もう戻ってこないんじゃないかって。

あの笑顔を見られなくなるのは、嫌だな。

このとき初めて、そう強く思ったんだ。




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