たとえ9回生まれ変わっても
5.『雪の降る夜に』
学園祭が終わって12月に入ると、一気に空気が冷え込むようになった。
12月のはじめに期末テストがある。
2学期最後のテストが終われば冬休みだ。
そしてわたしは今日、16歳になった。
「あー、範囲広すぎっ!」
「ていうか時間なさすぎー」
井上さんと吉田さんは頭を抱えている。
「森川さんは余裕そうだよねえ」
「そんなことないよ……勉強は普段からしてるから、そんなに焦ることはないけど」
「いいなあーそんなこと言ってみたい!」
「その余裕ちょっと分けて!」
放課後、井上さんと吉田さんに頼まれて勉強を教えることになった。
普段部活で忙しい2人は、テスト前に集中的に勉強するらしい。
学校の近くのカフェには、同じような学生たちがたくさん集まっていた。
人に勉強を教えるのは苦手だし、わたし自身自信を持って教えられるほど理解しているわけじゃないけれど、こんな風に頼ってもらえるのは嬉しいな、と思う。
いままでこんなことはなかったから、やっぱり少し緊張するけれど。
「森川さん、英語教えるの上手だよね」
「うんうん、すごく丁寧だし、黒岩より全然わかりやすい!」
「そ、そうかな」
いままで何もなかったわたしだけれど、ひとつだけ、夢ができた。
英語をもっと勉強して、おばあちゃんの住んでいるところへ行ってみたい。
おばあちゃんの家は、お母さんの生まれ故郷でもあるから。
どんな場所なのか、どんな生活をしているのか。
いつかこの目で見てみたい、そう思った。
まだまだ話すのは下手だから、もっと頑張らないといけないけれど。