たとえ9回生まれ変わっても
「もうすぐクリスマスじゃん。何かプレゼントあげるとか」
「いっそ告白しちゃおう」
2人のテンションがどんどんあがっていくから、わたしは慌てて止める。
「あ、あの、ほんとにそういうのじゃないから」
「森川さん照れてる。かわいいー」
からかわれて、わたしはさらに熱くなる。
「そ、そういえばわたし、今日は早く帰らなきゃいけないんだった」
「何かあるの?」
「うん、ちょっと……」
わたしは苦笑いをした。
今日がわたしの誕生日だということは、2人には言っていない。
というか、言えない。
聞かれてもいないのに自分から報告するのは、なんだかおこがましい気がして、気が引ける。
こういうとき、友達同士なら、何も気を遣うことなくお祝いしたりするんだろうか。
プレゼントをもらったり、ケーキを食べたりして。
友達同士でそういうことをするのに、憧れはあった。
でも家族以外に誕生日を祝われたことがないわたしには、よくわからない。
帰り道、自転車を漕ぎながら、ふと紫央の顔が浮かぶ。
ふわふわした柔らかい髪、ビー玉みたいにまん丸な、青色の瞳。
わたしと同じ色をしているけれど、わたしよりずっときれいな目をした男の子。
紫央、と口に出して言ってみる。
普段、何気なくその名前を口にしているのに、改めてその名前を呼ぶと、なんだか響きが違って聞こえる。
……ああ、もう。
井上さんと吉田さんが変なことを言うから。
これじゃあまるで、ほんとうにわたしが紫央を好きみたいじゃないか。