たとえ9回生まれ変わっても


「ぼくの魂は、あの日からずっとここで眠っていた。眠っていると、泣き声が聞こえてくるんだ。それが誰の声か、すぐにわかった。ぼくがいなくなって、蒼乃が泣いているんだって。蒼乃に元気になってほしいって、ずっと願ってた」


そして目が覚めたときには、人間の、蒼乃と同じ歳くらいの男の子になっていたーー。


「きっと、いまのぼくは、ぼくがいちばんなりたかった姿なんだ。ずっと羨ましかった。蒼乃と同じ歳の男の子になって、一緒にご飯を食べたり、遊びに行ったりしてみたかった」


「紫央……」


紫央の青い瞳が、まっすぐにわたしを見つめる。


「蒼乃が好きだから」


紫央の言葉に、わたしの目から涙があふれた。

ずっと、言いたかった言葉。


伝えたかった思い。


「わたしも、紫央が好き」

怖くて伝えられなかった。

いつか、いまより自信が持てたら、好きって伝えようと思っていた。

だけど、いつかなんてなかった。

いましか、伝えられないんだ。

「大好きだよお……」

ひとりぼっちのわたしの前に、紫央は突然あらわれた。

距離が近くて、いきなり抱きついてきたり、勝手に部屋に入ってきたり、何度もどきどきさせられた。

初めての感情に戸惑ったけれど、自分の気持ちを知った。

紫央が好き。

1人の男の子として。

もっと近くに行きたい。

ずっと一緒にいたい。

そう強く願った。


< 152 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop