たとえ9回生まれ変わっても
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8時を過ぎたころ、お母さんとお父さんが病院から帰ってきた。
「いやあー、すまんすまん。最近ガタがきてるなとは思ってたんだけどな。だましだましやってたらこんなことになっちまって」
お母さんに肩を支えられながら、お父さんはのんきに笑っている。
「もう、自覚があったなら早く言ってちょうだいよ。急に動けなくなるのがいちばん困るんだから」
とお母さんは呆れ顔だ。
それからわたしを見て、あのね、と続けた。
「お父さんね、ただのギックリ腰じゃなくて、もっと悪かったのよ。それで、手術することになったの」
「えっ、手術!?」
「そう、明後日。休みをとるから、1日留守になると思うわ。術後もしばらく安静にしてなきゃいけないし」
お父さんがそんなに腰を悪くしていたなんて、全然気づかなかった。
痛みは前からあったはずなのに、弱音を吐くところなんて見たこともない。
きっと、お店を空られないから無理をしていたんだ。
「だから蒼乃、留守番よろしくね」
お母さんは、ぽんぽんと私の肩を叩いた。
「それから紫央くんも。改めて、今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ、ふつつか者ですがよろしくお願いしますっ!」
背筋をピンと伸ばして言う紫央に、お母さんがぷっと吹き出した。
「紫央くんそれ、嫁入りのときのセリフよ?」
「えっ、そうなの?」
紫央が笑って、みんなであははと笑った。