たとえ9回生まれ変わっても




8時を過ぎたころ、お母さんとお父さんが病院から帰ってきた。

「いやあー、すまんすまん。最近ガタがきてるなとは思ってたんだけどな。だましだましやってたらこんなことになっちまって」

お母さんに肩を支えられながら、お父さんはのんきに笑っている。

「もう、自覚があったなら早く言ってちょうだいよ。急に動けなくなるのがいちばん困るんだから」

とお母さんは呆れ顔だ。
それからわたしを見て、あのね、と続けた。

「お父さんね、ただのギックリ腰じゃなくて、もっと悪かったのよ。それで、手術することになったの」

「えっ、手術!?」

「そう、明後日。休みをとるから、1日留守になると思うわ。術後もしばらく安静にしてなきゃいけないし」

お父さんがそんなに腰を悪くしていたなんて、全然気づかなかった。

痛みは前からあったはずなのに、弱音を吐くところなんて見たこともない。
きっと、お店を空られないから無理をしていたんだ。

「だから蒼乃、留守番よろしくね」

お母さんは、ぽんぽんと私の肩を叩いた。

「それから紫央くんも。改めて、今日からよろしくお願いします」

「こちらこそ、ふつつか者ですがよろしくお願いしますっ!」

背筋をピンと伸ばして言う紫央に、お母さんがぷっと吹き出した。

「紫央くんそれ、嫁入りのときのセリフよ?」

「えっ、そうなの?」

紫央が笑って、みんなであははと笑った。



< 23 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop