たとえ9回生まれ変わっても
紫央の「しばらくの間」の寝床は、私の部屋のとなりの空き部屋になった。
たまにお客さんが来たときに、客間として使っている部屋だ。
がらんとした部屋に布団を敷く。
わたしは、目の前にいる紫央をちらりと見た。
紫央が着ている青色のジャージは、わたしが中学のときに着ていたものだ。
ところどころ糸がほつれていて、毛玉もついている。
背丈が同じくらいだからサイズはぴったりだけれど、自分が着ていたものを男の子が着ているというのが、なんだか見ていて恥ずかしくなってしまう。
「ねえ蒼乃」
「え?」
蒼乃ーーって、さっそく呼び捨て?
顔をあげて、どきりとした。
紫央の澄んだ青色の瞳が、じっとわたしを見つめていたから。
「蒼乃は、何かひとつもらえるなら、何がほしい?」
「え?」
何で急にそんなことを聞くんだろう。
何かもらえるんだろうか。
「何、って?」
「もし、何でも好きなものをもらえるとしたら」
ーーなんでも好きなものをもらえるとしたら。
物なんて、何もほしいものはない。
だけど、ひとつだけ、ふっと思い浮かんだ。
「……黒い目」
「それは、なんで?」
紫央の青い瞳に、ほんの少し影が落ちたような気がした。
わたしはためらってから、小さくつぶやく。
「自分の目が嫌いだからだよ」