たとえ9回生まれ変わっても
「……そっか」
紫央はうなずく。
わたしは我に返って、急に恥ずかしくなった。
わたし、会ったばかりの男の子に、何を正直に話しているんだろう。
でも、紫央の青い目の前で、わたしはどうしてか、自分をごまかすことができなかった。
それに、もしかしたら、紫央も同じような経験をしたことがあるんじゃないか、と思った。
もし紫央が同じことを言われたら、どうするだろう。
紫央みたいに明るい人なら、笑って返せるんだろうか。
……何も反応がない。
ちらりと紫央を見る。
気にすることないよ、とか、そんなこと言わないで、とか、言われるかと思った。
でも、紫央の言葉は、わたしが予想もしないものだった。
「ぼくが、きみを助けるよ」
「え……?」
「蒼乃を、暗闇から連れ出してあげる」
迷いのない口調だった。
わたしはぽかんとして紫央の顔を見つめた。
いたって真剣だ。
冗談を言っている様子はどこにもない。
助ける?
紫央が、わたしを?
どういう意味だろう。
それに、会ったばかりのわたしのために、どうして紫央が泣きそうになっているんだろう。
わけがわからないのに、なんだか笑ってしまった。
やっぱり、不思議な男の子だ。