たとえ9回生まれ変わっても
2.『猫の手も借りたい』
シオを抱きあげたとき、小さくて、軽くて、まるでぬいぐるみの猫みたいだと思った。
痩せ細っていて、毛は固くごわごわしていて、何年も忘れ去られて放っておかれたかわいそうなぬいぐるみ。
だけどその体には、ちゃんと温もりがあった。
『うちにおいで』
お母さんはそう言って、小さなシオを家に招き入れた。
あの日から、シオはわたしたちの家族になった。
10年間、ずっと一緒だった。
わたしはシオの言葉がわからないし会話もできないけれど、通じあっていると思っていた。
でも、シオは突然、何も言わずに家を出て行ってしまった。
何度もシオの夢を見ては、同じことを問いかけた。
ーーどこにいるの?
ーーどうして突然いなくなったの?
問いかけには答えず、シオの背中は遠ざかっていく。
もう振り向かないとわかっている。
何も答えてくれない。
言葉が届かないのがもどかしい。