たとえ9回生まれ変わっても




体が重くて目が覚めた。何かが体にまとわりついているような……。

「おはよう、蒼乃」

「わっ!?」

寝ているわたしに、紫央が抱きついていた。

「な、ななななななにしてるの」

「蒼乃が起きるの待ってたんだよ」

まるで邪気のない顔で、紫央はにこにこと言ってのける。

「すぐに抱きつくのはやめてって言ったでしょ!」

「すぐじゃないよ。一応抱きついていいか聞いたし、さっきからずっとこうしてたし」

「余計ダメだから!」

私は布団から抜け出して、大股で部屋のドアを開けた。

テーブルの上には朝ご飯が用意してある。ロールパンとサラダとコーンスープが2人分。 

今日はお父さんの手術の日だ。
お母さんは店を休みにして、病院に付き添いに行っている。

わたしも心配で一緒に行きたかったけれど「あんたは学校に行きなさい」と言われてしまった。

せめて見送りはしようと思っていたのに、いつも通り起きるのは結局いつも通りギリギリ。

パン屋の娘なのに、朝は弱いのだ。

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