たとえ9回生まれ変わっても
◯
体が重くて目が覚めた。何かが体にまとわりついているような……。
「おはよう、蒼乃」
「わっ!?」
寝ているわたしに、紫央が抱きついていた。
「な、ななななななにしてるの」
「蒼乃が起きるの待ってたんだよ」
まるで邪気のない顔で、紫央はにこにこと言ってのける。
「すぐに抱きつくのはやめてって言ったでしょ!」
「すぐじゃないよ。一応抱きついていいか聞いたし、さっきからずっとこうしてたし」
「余計ダメだから!」
私は布団から抜け出して、大股で部屋のドアを開けた。
テーブルの上には朝ご飯が用意してある。ロールパンとサラダとコーンスープが2人分。
今日はお父さんの手術の日だ。
お母さんは店を休みにして、病院に付き添いに行っている。
わたしも心配で一緒に行きたかったけれど「あんたは学校に行きなさい」と言われてしまった。
せめて見送りはしようと思っていたのに、いつも通り起きるのは結局いつも通りギリギリ。
パン屋の娘なのに、朝は弱いのだ。