たとえ9回生まれ変わっても

わたしは振り向いて、当たり前のように玄関までついてきた紫央に尋ねた。

何やら、見覚えのある大きなバッグを肩に下げている。
たぶんお母さんのエコバッグだ。

「今日はどうするの?」

「ヒミツー」

満面の笑みでかわされた。

「ま、あとでわかるよ」

「あとで?」

なんだか嫌な予感がした。

「……言っとくけど、学校はついてきちゃダメだよ?」

「うん!」

不安しかないのだけれど。

のんびりしている場合じゃない。
急がないと遅刻してしまう。

ひらひらと手を振る紫央に背を向けて、わたしは扉を閉めた。



< 32 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop