たとえ9回生まれ変わっても
返事に困っていると、うしろから足音が聞こえた。
「呼んだ?」
「紫央……」
わたしは振り向いて目を見開いた。
「あっ、昨日の人たち。いらっしゃい」
にっこり笑いかける紫央に、3人はさっきまで文句を言っていたことも忘れて詰めよった。
「紫央くんていうの?」
「名前もかわいいー」
「連絡先教えて!」
「ごめんね、携帯ないんだ」
「えーそうなのー」
その勢いに困る風もなく、紫央は笑顔で応えている。
す、すごい……。
3人が店を出て行くと、突風が過ぎ去ったように店の中が静かになった。
「紫央、疲れてたんじゃないの? 休憩しなくて大丈夫?」
「うん! 朝もお客さんいないとき寝てたし」
……寝てたんだ。