たとえ9回生まれ変わっても
嫌な予感を振り払いたくて、ぶんぶんと頭を振った。
「どうしたの、蒼乃。頭痛いの?」
お母さんが心配そうに見つめる。
「虫がいたのか?」
とキョロキョロと辺りを見るお父さん。
「違うっ!」
紫央は幸せそうにコクコクと喉を鳴らしながらスープを飲んでいる。
いつも通りの和やかな光景。
紫央がやってきて、賑やかになった家。
シオのことをまだ引きずっているのは、わたしだけだ。
お父さんもお母さんも、いなくなった猫のことなんて、とっくに忘れてしまったみたい。
2人とも仕事や入院で忙しくて、それどころじゃないのだろう。
それも仕方のないことだと思う。
人は生きているかぎり、前に進んでいくから。
忙しい生活の中で、辛いことを忘れていくものだから。
いつまでも忘れられずに立ち止まっているのは、わたしだけだ。