たとえ9回生まれ変わっても
◯
ご飯のあと、わたしは自分の部屋に戻って、机に向かった。
来週からはじまる中間テストの勉強だ。
携帯からはさっきから、ポン、ポン、と軽快な音が鳴っている。
『勉強疲れたー』
『数学むずすぎ!』
井上さんと吉田さんだ。2人もテスト勉強中らしい。
わたしの携帯が、こんなにも忙しなく鳴り続けるなんて、いままでになかったことだ。
画面には次々と短い言葉やスタンプがあらわれては流れていく。
井上さんと吉田さんと連絡先を交換した。たまに話をするだけだったクラスメイトの2人が、日常的にやりとりをする関係になった。
アプリで3人のグループを作って、頻繁に連絡をとっている。
といっても、いつもメッセージを受け取るばかりで、わたしから何かを送ることはほとんどない。
グループを作ることに慣れている人からすれば、簡単なことなのだろう。
そうだね、とか、いいね、とか、スタンプをポンと送ればいい。
だけどこれでいいのかと迷っているうちに、2人のやりとりはどんどん進んでいく。
まるで実際に面と向かって会話しているようなテンポのよさに、わたしはあっという間においていかれてしまう。
きっと2人は、わたしがいないところでも、いつもこんな風に楽しそうに話しているんだろう。
その中に、わたしなんかが入ってしまっていいのだろうか。
話を中断してしまったりしないか。
どうしてわたしをグループに誘ってくれたんだろう。
余計な考えばかりが浮かんで、簡単な返事もできないでいる。
勉強はさっきからちっとも進んでいない。