たとえ9回生まれ変わっても
「なんて書いてあるの?」
「わっ!?」
いきなり後ろから覗き込まれて、わたしは思わず携帯を落としてしまった。
「紫央、部屋に入るときはノックしてって言ったでしょ」
「そうだっけ?」
キョトンと首をかしげる紫央は、気をつける気なんて毛ほどもなさそうだ。
「どうしたの?」
「お母さんが、蒼乃がちゃんと勉強してるか見てきてって」
「う……」
「してなかったよって言っとくね」
「それはダメッ」
わたしは慌てて紫央を止めて、携帯をサイレントモードにして鞄の中にしまった。
音がするから気にしてしまうのだ。
「はい。お母さんから差し入れ」
「あ、ありがとう」
紫央がくれたココアとラスクを受け取った。
食パンの切れ端で作ったラスクは、ひと口サイズで食後のおやつにぴったりだ。
「……何してるの?」
クッションを抱いて頬擦りしている紫央に、わたしは言う。
「このクッション気持ちいいから好きー」
「持ってっていいから。じゃあね、ありがとう」
「蒼乃が冷たい……」
クッションと一緒に、紫央も部屋から放り出した。