たとえ9回生まれ変わっても
紫央といると、いつもヒヤヒヤさせられる。
急に変なことを言うし、すぐに抱きつくし。
いちいち動揺しているわたしが馬鹿みたいだ。
青っぽい店内とはうって変わって、トイレの中は真っ白だった。
個室が2つと手洗い場のほかに、大きな鏡のついた化粧台がある。
「はあ……何やってるんだろう」
わたしは鏡を見ながらため息を吐く。
鏡に映っているのは、いつも通りの冴えない自分。
目が青いというだけで、ほかには何ひとつ目立つことなんてない、むしろなるべく目立ちたくないと願う、影みたいな自分。
紫央はどうしてあんなことを言ったんだろう。
『だってぼく、蒼乃のこと大好きだもん』
紫央は、誰からも好かれる人だ。
初めて会った人とでも、どんな場所でも、すぐに溶け込んでしまう。
だけどわたしは違う。
人に近づくのが怖くて、距離をとって、いつも輪の外からみんなを見ている。
わたしを好きになる人なんて、いるはずがない。
だって、わたしがわたしのことを、こんなにも嫌いなんだから。